第79章 邂逅
「あ……っ」
熱い熱い涼太の唇を感じながら、背中には冷蔵庫ドアのひんやりとした感触。
ワンルームのこの部屋は、どこもかしこも涼太の気配と香りだらけ。
「涼太……もあきも……なんで、そんなに……優しいの……?」
キスの合間にこめかみに触れていた唇が離れて、切れ長の瞳が覗き込んでくる。
「それはねみわ……みわの気持ちが、はね返って来てるんスよ」
諭すような、でも柔らかい声音。
「はね、かえって?」
「そ。気持ちってね、鏡みたいになってんじゃないかって、思うんスわ。
嫌な気持ちを持って接したら、嫌な気持ちでかえってくる。好きって気持ちで接したら、好きって気持ちでかえってくる。
優しい気持ちで接したら、優しい気持ちがかえってくるんスよ。モチロン例外はあると思うけど」
「そう……かも……。だから涼太の周りには、優しいひとが集まるんだね」
凄く納得して、そう言ったら……ほっぺたをびよんとつねられた。
「だーかーら! それがみわだって言ってんの! 相変わらず自分だけ除外すんの、やめないっスか!」
「わたひ?」
そのまま喋ったら、"し"が上手く言えなかった。
「みわ、オレとあきサンのためを思うなら、我慢しないで。ね」
「う……」
甘えて、いいんだろうか。
身を委ねてしまって、いいの……?
「あっ」
器用に服の中に入り込んで来た手は背中に回り、あっという間にブラのホックが外された。
「オレのコト好きなヒトー?」
「は、はいっ」
「オレのお誕生日のお祝い、したいヒトー?」
「はいっ」
「はい、よろしい」
反射的にこころのまま答えた途端、身体が浮いた。
あまりに突然すぎて言葉も紡げないでいるうちに、次に背中で感じたのは冷蔵庫でなく、シーツの柔らかさだった。
「みわ、抱きたい」