第79章 邂逅
「みわが、今日の為にスゲー準備頑張ってくれたんだろうってコトも分かるし、あきサンのコト大切に思ってんのも知ってる。どっちも大事にしてくれてんのも分かってる」
今日、特別な日なのに……。
涼太にもあきにもこんな風に気を遣わせて。
私、何やってるんだろう。
いつもいつも、何やってるんだろう。
そんな顔をさせたいんじゃ、ないのに。
「でもさ」
ゆっくりと、琥珀色の瞳が近付いてくる。
近くなればなるほど、ぼやけてきて……
「今は、オレに夢中になって」
「っ……」
返答は、彼に飲み込まれていった。
一度深くまで重なった唇は、焦らすように離されて、また啄むように包まれてを繰り返す。
「ん……う」
どうしようもないくらい、疼く。
だってもう私は、既に彼に夢中だから。
思い切り貫かれて、深くまで愛し合いたい。
何もかもを忘れて、ただただ彼に溺れたい。
その醜い欲望が、振り払えないんだもの。
「ごめん……オレのワガママ聞いて」
「ちが……う、涼太の我儘、じゃないよ……」
そう、違う。
これは、彼の優しさ。
こう言えば私の罪悪感が薄れるだろうって、そう思っての発言だって、分かる。
「ううん、ワガママ。ヤローなんてさ、ヤレるならなんだって都合いいコト言うんスよ?」
男性は、そういう生き物なのかもしれない。
涼太だって、そういう気分になる事もあるかもしれない。
でも今この時の彼は、そうじゃない……それがよく分かる。
「ごめんなさい……私また、余計な事考えてた……。涼太もあきも、大好きなの。悲しい気持ちに……嫌な気持ちにさせたいんじゃないの……ごめんなさい……」
謝る事すら、うまく出来なくて。
ぐちゃぐちゃだ、もう。
いつまでも前に進めないこんな私でも、嫌にならない?
「分かってるっスよ……オレ達もみわのコトが大好きだからさ」
どうして皆、優しいの?