第79章 邂逅
パタン、と冷蔵庫が閉まる音と共に、視界が明度を下げた。
それが涼太の作る影だと気が付いた時には、私の身体は既に彼の腕の中で。
「……涼、太?」
「ハタチって言ったって……まだ、学生だし。まだ、ガキだし」
ぎゅ、と腰に回された腕に力が込められる。
重なった部分が、あったかい。
「うん……そうだよね」
成人したからって、なんでもかんでもひとりで出来るようになるわけじゃない。
私だって、おばあちゃんにまだまだ面倒を見て貰ってばかり。
今までかけてくれたお金は、少しずつ返していきたくて……毎月、ほんの僅かだけれど……おばあちゃんに返している。
最初は断られたけど、今は渋々受け取ってくれてる。
おばあちゃん、自分にもお金いっぱい使って、楽しんで欲しい。
「……みわ?」
「はっ、はい」
何、その甘い声。
ついさっきまで、恋人のムードは無かった。
どちらかというと、彼と過ごした高校時代……部活後に皆でワイワイとお喋りする、そんな雰囲気だったのに。
いつ、涼太のスイッチが入ってしまったんだろう。
「っあ」
温かい指に突然喉元を撫でられて、自分でも笑ってしまうくらいに身体が跳ねた。
「食後のデザート、いい?」
「あ、ケーキじゃ足りなかっ……ん」
今度は脇腹。
すりすり、と大きな手が触れる。
ケーキでは満腹にならなかったのかと一瞬勘違いしそうになったけれど……違う、そうじゃない。
この先の展開を察した身体の芯が熱くなる。
「みわ、マジで敏感すぎっスね」
お願い、耳元で囁かないで。
わけが分からなくなる。
……予感は、してた。
だって、お誕生日だもの。
でも、今……あきが大変な時なのに、私だけ楽しくいちゃいちゃして、いいのかなって。
どうしたらいいかずっと悩んでて……私の考える事なんかお見通しなあきに、ラブラブして来なかったらはっ倒す……と言われて来たんだけれど。
罪悪感が……。