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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


「写真撮っていいスか?」

「うん、ちょっと不格好で恥ずかしいな……」

「全然! めっちゃキレイっスわ」

涼太はスマートフォンを片手に、真剣にタルトを撮影している。
右から左から、上から、ちょっと下から……まるで、尻尾を振っているわんこのような動きだ。
このひと本当に、どれだけの姿を持っているんだろう。

「お待たせ! 食べたいっス!」

少年のようにキラキラと目を輝かせる涼太の前で、ケーキ用のナイフで切れ目を入れていく。
出来るだけ、フルーツが全種類入るように……うう、見られてると緊張する……。

「はい、どうぞ召し上がれ」

「めっちゃ美味そうっスね! いただきまーす」

長い指先が器用に扱うフォーク……全然違うところに目を奪われてしまう。
バスケしている時と、おんなじ手……なのに。

手入れされた指先から魔法がかけられたかのように、そのフォークに刺さったケーキはさっきよりもずっと美味しそう。

目線を上げると、ゴクンとケーキを飲みこんだ涼太と目が合った。

「みわ……これ……」

え、え、不味かった!?
試作の段階では、そんなに悪く……なかったんだけど……工程にミスがなかったか、急いで思い起こす。

涼太は俯いて、次の言葉を紡ぎかねているように見える……けれど。

「店で売ってんのより美味いんスけど!!」

「……へ?」

「なにこれ、下のクリームどうなってんスか? なんでこんなに美味いの? あ、チーズの層もある」

「え、あの、クリームはただのカスタードクリームだよ……」

まるで極上の料理を口にしたかのような褒めように、顔が段々熱くなる。
嬉しい、嬉しいんだけれど、とっても恥ずかしい。

よく見ればアラばっかりだし、クリームちょっと乗ってない所があるし、タルト生地がちょっと凹んでる所があるし、バランスを間違えてオレンジばっかり乗ってるエリアがあるし……。

……でも。
涼太の喜んだ顔……嬉しくて、嬉しくて。

次は、もっともっと美味しく作れるように、頑張るね。




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