第79章 邂逅
「んー、ウマいっ!」
この瞬間が、説明出来ないほど幸せ。
大好きなひとが"美味しい"って自分のご飯を食べてくれるのって、なんて嬉しいんだろう。
「みわ、ちゃんと食べてるっスか?」
「うん、食べてるよ」
その姿を見ているだけで、胸がいっぱいだ。
空腹……も感じてた筈なのに、今はそうでもなくて。
「みわのメシはさあ、なんてゆーか、ほんわりするんスよね」
「……ほんわり?」
「そ、なんかほわほわってして、ホッとするんスよ」
「ほわほわ……」
「みわみたいっスね、作るヒトに似るんスかねえ」
私みたい……って。
「なんスか、ぽかーんとして。癒されるっスよ、みわ」
癒される?
涼太が? 私で?
ああ、またいつもの。
涼太はいつも私を褒めて励まそうとしてくれてるんだ。
気を遣わせたいわけじゃ、ないのに。
「あのっ、ありがとう、あのね、ケーキも、あるよ」
そしていつも訳のわからない返しをしてしまう。
想ってくれているのも分かる、大事にしてくれているのもちゃんと分かってる、それなのにいつもいつも余計な気持ちばかりが邪魔をして。
……結局、付き合い始めた高校1年の頃から、何にも進歩してないんだ……。
「じゃあ頂くっス」
涼太は気にした様子もなく、ニコニコと笑顔を向けてくれている。
冷蔵庫を開けると、一番上の段に私のケーキと……隣にもビニール袋が入れてある。
「涼太、この上の段の袋、このままでいいの?」
「ああ、お菓子貰ったんスよ。センパイ達と食おうかと思ってさ」
「そうなんだ……わっ」
ケーキだけ取り出そうとしたのに、指が引っかかって隣の袋まで落ちそうになってしまう。
慌てて手で押さえたら……半透明な袋の中にメッセージカードが入っている事に気がついた。
ドクン、また心臓が嫌な跳ね方をした。
綺麗な手書き文字。
メッセージは英文。
"素敵な夜を、ありがとう"
そう、書かれていた。