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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第25章 勉強だったり合宿だったり新学期だったり


「セーンパーイ! 補習免れたっス〜!」

練習後、声高にそう告げる黄瀬くんを、先輩方は信じられないものを見るような目で迎え入れた。

「お前……マジかよ!?」
「あの、どう見ても絶望的だったのを挽回したのか! よくやったなあ」
「オマエ、ズルしてねーだろうな!」

次々と口をつく言葉たち。
一見黄瀬くんを馬鹿にしているようにも聞こえるかもしれないけれど、皆素直に喜んでくれているようである。

勿論、黄瀬くんもそれは分かっているから、先ほどから楽しそうに先輩方とじゃれあっていた。

「みわっちのおかげなんスよ! なーんも分からなかったオレにイチから全部教えてくれたんスから!」

先輩方の視線が私に集まる。

「神崎……オマエやっぱり凄いやつなんだなあ……」

「みわっちの事もっと褒めて褒めて!」

「なんで黄瀬が嬉しそうにしてんだよ! なんか頭くるな」

「ひどい!」

そんな風に騒ぐ皆を見て、ほっと安堵した。
少なからず責任を持ってやっていたし、少しでも役に立てたようで良かった。

「私なんて何も。黄瀬くんが頑張ったからですよ」

自分でも驚くくらいの笑顔だったと思う。
嬉しかった。

体育館の戸締まりをするために、談笑する皆の輪を抜け、ひとり体育館に向かった。

「みわっち! 待って! オレも行くっス!」

薄闇の中、慣れた体育館までの道を歩いていると、後ろから呼び止められた。

こんな暗い中でも、彼の周りだけスポットライトが当たっているように見える。
輝いている、眩しいほどに。

「どうしたの? 電気消して鍵閉めるだけだからすぐ戻るよ?」

「たまにはいいじゃないっスか!」

靴を脱いで体育館に入り、電気のスイッチを押しに、舞台袖入り口に入る。

うちのバスケ専用体育館の照明は、ここで全て操作できるようになっている。

舞台袖は闇に包まれていたが、毎日の事なので特に気にする事もなく、慣れた手つきで電気を消していく。

「みわっち、見ないでもスイッチ覚えてるんスね……」

感心したように呟く黄瀬くんの手が、スイッチを押したばかりの私の手の上に重なった。


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