第79章 邂逅
『あー、そゆことか。分かった、サンキュ。みわの資料使いやすくて助かる』
「そこの表記、分かり辛いですね、お手間を取らせてしまってすみません。見直します」
『ん、サンキュ。明日皆にも言っとくわ』
「ありがとうございます。マクセさんにも連絡して、周知して頂くようお願いしておきます」
資料作りだって、まだまだだ。
こうして直接意見を頂けるのは、すごくためになる。
自分ひとりで勉強していても、分からないこと。
『そだ、マクセさんは来週こっち来るって言ってたけど、みわは来月だよな? その頃には成人してんだから、誕生祝いと成人祝い、しようぜ』
閑田選手はそう言って電話を切ってしまったけれど……ごめんなさい、今は来月の事を考えている余裕はなくて。
そう言えば、マクセさんもお祝いして下さると言ってた……皆さんに気を遣わせてしまってなんだか申し訳ない。
お誕生日……。
はぁ、と大きなため息が出た。
また振り出しに戻る。どうしよう。
もう、迷惑かな。
あのポーチのひとと、一緒に過ごしたりするのかな。
ああ、また余計な事ばっかり考えてる。
怖い。
どうしたらいいのか分からなくて、怖い。
でも……逃げたくない。
……お誕生日、特別な日だ。
大切なひとがこの世に生まれた、大切な日。
お祝い、したい。
怖いって、何が怖いの?
ちゃんと、目を逸らさずに考えないと。
涼太の顔が怖かった? 違う。
そうだ、怖かったんだ。
……もう必要ないって、言われる事が。
「お風呂、入ってこよう……」
お風呂に、入らなきゃ。
そうしたら水分を取って、ストレッチをして……
そう思うのに、身体が動かない。
めそめそしてたって、仕方ないのに。
あのひとが嫌いな弱い人間には、なりたくないのに。
じわじわと、左手がジンと痺れるような感覚。
頬を温かいものが伝う。
今だけ、少しだけ。
少しだけ泣いたら、すぐに元通りになるから。
お願い、涙さん……弱いこころを全部流して。
強いこころだけ、残るように。