第79章 邂逅
「どうしよう……」
明日は、涼太のお誕生日。
最初はレストランを予約……という話が出たけれど、出来るだけ人混みを避けてのんびり過ごさせてあげたいし、涼太は夕方まで練習試合があるという事で、ゆっくりおうちで過ごすバースデー……の予定だった。
あれから、涼太とは連絡を取っていない。
……っていうと語弊があるかな。
朝晩の挨拶のメッセージはいつも通り来ているから、連絡がないわけじゃないんだけれど……明日、どうしよう。
誕生日の話題は上がらない、というか挨拶以外の会話がない。
予定通り、でいいのかな。
それとも、もう私とは過ごしたくなくなっちゃったかな。
自室の布団に寝転がって色んな事を想像すると胸がドキドキして、ちょっと息が苦しくなって……考えなきゃいけないのに、考えたくなくなってしまって……。
距離感が分からない。
どこまで踏み込んでいいんだろう、こんな微妙な距離、初めてかもしれない。
涼太に連絡を取るか取るまいかスマートフォンとにらめっこをしていると、沈黙を守っていた機械は突然震え出し、着信を告げた。
発信者は……閑田選手。
一応、レギュラー陣とは連絡先交換を済ませてある。
こうして電話がかかってくるのはそうそうないから、油断してた。
「もしもし、神崎です」
『あーみわ? ごめんなー夜遅くに』
相変わらず彼の呼び方は変わらない。
何度も言ってるんだけれど、変えてくれる気はないみたい……。
実害があるわけじゃないから強く言ってはいないんだけれども。
「どうしましたか?」
『ちょっとこの間の時借りた資料がさ……って、どうしたの? 声、元気ないけど』
「え……っ、そうですか? そんなつもりは」
『なに、彼氏とケンカでもした?』
ずばり、図星。
思わず黙ってしまった。
『ふーん……なんか順風満帆っぽいかと思ってたけど、まだ付け入るスキはありそうだ』