第79章 邂逅
「だからもー、なんで驚いてる顔してんスか! なんで心当たりないって顔してんの!」
「だ、だって涼太が驚く事言うから……!」
今までの事件って、どれの事?
私が原因じゃないって、どれが?
というかやっぱり涼太怒ってる!?
「もー諦めて何度でも言うから! みわのせいじゃねえから! 蒸し返すつもりはないっスけど……みわがあの変な女に刺されたのだって、オレのせいでしょ、オレを庇ったからでしょ」
「え、あれは涼太のせいなんかじゃないよ。私が考え無しに飛び出したからだよね?」
「違うんスよ、そこじゃない。そもそもオレが居たからあんな事になったんスよ?」
まさか、そんな古い話をされるとは思わなくて。
幾度となく傷あとに落とされたキスを思い出す。
やっぱり、涼太の中に深く深くトラウマとして刻まれてしまっているんだろう。
「この間の……スズサンとの、あの件だってあのオンナのせいっスよね?」
「あ、ううん……あれも、私が悪いの。ちゃんと的確な判断をしていれば良かった場面がいっぱいあって……」
当時の事を脳が思い出そうとし始めた瞬間、涼太の大きい手は私の両肩を掴んだ。
「ごめん。ヤな事思い出させてごめん。とにかく、みわは悪くないんスよ。ね? 分かってくれるっスか?」
「え……そ、そう言われても……」
だって、そうなんだ。
いつも、全部私が原因で災いが起きる。
私の周りにいるひとたちは、私のせいで不幸になっていく。
ずっとお母さんに言われてきた言葉だ。
今だってそう。
涼太は私なんかと付き合ってなければ、きっともっと楽しく、余計な事を気にせずにバスケと恋愛を楽しめてると思う。
私が黄瀬涼太の足枷になっている。
分かっている。
ずっと分かってる。
涼太の足を引っ張ってること。
私の存在自体が彼の邪魔をしていること。
だからいつか、私はちゃんと涼太を解放してあげなくちゃならないんだ。
この誰よりも優しいひとが、笑顔で過ごせるように。