• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


「と、とにかく放して、涼太」

頭が混乱して、落ち着いて考える事も出来ない。
とにかく今は、解放して貰ってゆっくり考えたい。

「放さねえって言ってんじゃないスか」

「だって、こんな状況じゃちゃんと話せな……っ」

こんな状況なのに、彼の指に素直に反応してしまう自分が悔しい。
涼太の気持ちが分からない自分が悔しい。

「涼太、ねえっ……どうして……っ」

想いが届いたのか、肌を滑っていた指が……止まった。
分かってくれたのかな、そう思っていたのに……

「なんで……っ、分かんねーんスか……!」

その喉が張り裂けんばかりの声に、私は何か、大切な事が分かってないんだって、ようやく気が付いた。

じっと見つめてくる宝石のような瞳。
続きの言葉は、まだ出てこない。
彼にとっては珍しく、言葉に詰まっている……そんな感じ。

ちゃんと……考えよう。
混乱しているだけじゃだめ。
ごちゃごちゃに絡み合った思考を、1本ずつ解いていかなきゃ。

そもそも、何の話をしていたんだっけ。
そう、あきがおばあちゃんの家で暫く生活するって事になって、私も一緒に寝泊まりするって言ったら、涼太が……

……それで、今はあきの事を第一に考えたいって言ったら、涼太は反対だって、怒って……

怒って……

怒って…………たんじゃ、ない?

待っていたかのように、涼太が口を開いた。

「みわ……あきサンのコトが心配なのも、優先して考えたいのも分かるっスけど……みわになんかあったらどうなるか、ちゃんと考えて欲しいんスわ」

私に、何かあったら……

私、どうしてこんな簡単な事に気が付かないんだろう。

刺傷事件の時、強姦事件の時、ずっと自分を責め続けていた涼太の背中を見たじゃない。

怒ってるんじゃない、ただただ私の事を心配してくれているだけなんだ、このひとは。

私のトラウマ……って話してくれるけれど、実は、彼のトラウマの方がずっとずっと大きいのかもしれない。

彼に背負わせてしまったものの大きさに、今更気がつくなんて。





/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp