第79章 邂逅
今から帰るとのメッセージを受けて15分、玄関のカギが開く音が響いた。
「ただいまっスー」
「あっ……おかえり、なさい」
おかえりなさい、っていうのがやっぱりなんだかとっても気恥ずかしくて……ついどもってしまう。
「へへ、なんか新鮮っスね。おー、うまそ」
ひょいとキッチンを覗いて嬉しそうに微笑んだ涼太は、着替えるねと言ってすぐに行ってしまった。
……いつもの、涼太だ。
何か隠し事をしているようには思えないけれど……
じゃ、なくて!
今日はお話をしに来たんだってば!
「いただきまっす! なんか今日はすげー豪華じゃないっスか? 今日誕生日かと勘違いしそうになったっスわ」
「あ、うん、そう? 時間があったから色々作っちゃった」
本当はもやもやを払拭したくて……だったんだけど、そんな事言えるわけもなく。
「昨日センパイがメシ食いに来ててさぁ、みわのメシ美味いって言ってたっスよ」
「笠松先輩が来てたんだ」
「うん、食ったらすぐ帰っちゃったっスけど」
あの可愛らしいポーチ……先輩の、じゃないよね。
ううう、ダメだ、集中出来ないよう……。
「みわ、話って?」
「あっ……うん、ごめんね、突然時間作って貰って」
「ううん、それはいいんスけど、なんか急ぎなんスよね?」
「そうなの……あの、ちょっとあきの事で相談なんだけれどね、ちょっと、暫くの間あき、私のおばあちゃんの家で過ごそうかって話になってるんだ」
「へ? みわのお祖母さんのトコっスか?」
「うん、期間ははっきり決まってはいないんだけど」
あきと何回か話し合って、少しの間おばあちゃんちへ泊まる事にした。
とは言え、おばあちゃんちからあきの大学までじゃ時間も交通費もかかるし、そもそも根本的解決にはなってないから、新居が見つかるまでの一時的なもの。