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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


「忙しかったのに、付き合ってくれてありがとう」

しおらしくチアキサンはそう言って、カバンを手に取った。

「“私なんて”って思いながらプレーすんのはチームメイトに一番メイワクがかかるから、やめた方がいいっスよ。チアキサンが現役かどうかも知らないっスけど」

「うん……そうね」

「じゃ、オレ帰るっス」

「ありがとう。それじゃ……あれ?」

チアキサンは鞄をゴソゴソと探り、その後にポケットやらなんやら、アチコチを探り出した。

「どしたんスか」

「やだ、携帯落としたかも」

「はぁ?」

一緒に歩いてて、落とした音には気付かなかった。
付近に落ちていないかと辺りを見渡すが、電灯の明かりが届かない範囲の方が広くて、すぐに諦める。

「涼太のマンションかしら」

「オレの? つか、呼び捨て!」

オレのコトを名前で呼ぶ人間は少なくないけど、突然の名前呼びはやはり気分のいいものではない。

「いいじゃない、私たちの仲なんだし」

「なんの仲にもなってないっスけど」

「まだ、ね」

彼女は整った顔を輝かせ、慣れた感じでウインクをしてみせた。
外見だけならモテそうなのに、彼氏いないんだろうか。

つか、まだって……これからもなんの仲にもならねえってば!

「ごめんなさいね、見つけたらすぐ帰るから」

チアキサンはキョロキョロしながらウチへの道を歩き出した。
さっさと見つけて帰って貰わないと、貴重な睡眠時間が!



んで結局、チアキサンの携帯はマジでウチの玄関ドアの目の前に落ちてた。
なんで気付かなかったんスかね、絶対それなりに大きな音がするハズなのに……。

「ありがとう。帰る前にトイレ借りて行っていい?」

「ハイハイ」

もう何を言われても驚かない。
彼女がトイレに入ってる間に風呂場に行き、給湯器のスイッチを入れた。
15分待てば念願の風呂だ。

ありがとう、またねという声が聞こえて、玄関ドアが閉まる音。
ゆっくりしようと思ってたのに、すっかり予定が狂ってしまった。

明日の確認もしたいし、風呂の前にみわに電話しとこ。



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