第79章 邂逅
「アンタの気持ちなんてこれっぽっちも分かんねーし、分かろうとも思わないっスけど、その嫉妬にまみれた顔、一回鏡で見た方がいいっスよ」
自分の事を省みて、それでも足りないものを羨むならまだいい。
先があるから。前に進みたいって気持ちが、背中を押してくれるから。
でも、自分の事は全く見ずにただただヒトの事だけを羨んで、妬むのは醜いとしか言いようがない。
そんな事したって自分には何も残らないのに、なんて愚かなんだろう。
「マイナスな言葉は人間をダメにするし、女をブスにするんスわ」
彼女は、引き続きペットボトルを見つめ……突然勢いよく飲み干し、笑い出した。
「あっはっはっはっは! やだ、そこまでハッキリ言われるとは思わなかった!」
暫く大きな声でお腹を抱えて笑い、俯いて目元を拭った。
なんか面白い事、あったか?
「あー……そうね、貴方の言う通りだわ。私、本当にブスになってたと思う」
「そうっスね。分かったなら、これ以上ブスに磨きをかけることはないんじゃないスか」
「うん、もうやめるわ、これ以上ブスに磨きをかけるのは」
唱えるようにオレのセリフを復唱して、大きく頷いた。
ふと、ずっと抱えていた疑問を口にする。
「チアキサンはさ、なんでこの勝負をしようと思ったんスか? ノリとかたまたま、じゃないっしょ」
笑い声が、ぴたりと止まった。
「……なんでそう思うの?」
「なんでっつーか、どう考えても不自然っスよ。たまたまあの日酔っぱらってるのを拾っただけで、オレ達には何の関係もないし」
よく考えたら、なんでこうしてバスケに誘われているのかもよく分かんない。
この誘いがバスケじゃなかったら、門前払いしてる。
「関係……そうね、関係、ないかな。有名人の貴方に興味があっただけ」
「オレ、言うほど有名人じゃないんスけど」
「貴方は昔からそうよね」
「? どういう意味っスか?」
それ以上、返答はなかった。