第79章 邂逅
「私ね、いっつもこうなの。大事な所で決められないシューターなんて、使える訳ないわよね」
さっきの“やっぱりね”は、試合のシーンでも思い出したんだろうか。
「まあ、そうっスね」
持って来たドリンクボトルのフタを開け、ぐいと飲み干す。
渇いた喉が一気に潤った。
「……慰めたりしないのね」
彼女は手の中にあるペットボトルを見つめながらぽつりとそう言った。
「ん? 慰めようがないんスけど」
試合中、ここぞという場面で頼れるシューターが居る事がどれだけ心強いかよく知ってる。
「バスケって、信頼関係が必要っスからね」
例えば、ゴール下でリバウンドを取ってくれると信頼しているから思い切ってシュートが出来る。
信頼関係が一番重要だって、シューターならよく分かってると思うけど。
「貴方って、凄くプレイボーイで女の子を勘違いさせちゃうような事をポンポン言うタイプなのかと思ったら、全然違うのね」
「いや、ファンの子にはそれなりにちゃんと対応するっスよ?」
しかし、酷い言われようだ。
確か、最初に会った時にもなんか言われたような記憶が……。
「貴方はいつまでバスケをやるつもりなの?」
「いつまで、ってどーいう意味っスか?」
「どこを目指しているのか聞いてるの。インカレ制覇で満足? 実業団? NBA?」
NBA。
その単語を聞いた瞬間、頭に浮かんだのは特徴的な眉毛の赤髪の友人だ。
オレの、未来。
「んー……ま、それなりに考えてはいるっスけど、ナイショ」
みわにすらまだ話してないってのに、なんの関係も無いヒトに話す筋合いはナシ。
「なんでそんなコト聞くんスか? ヒトの事ばっかり気になる時って、自分に自信がないからっスよね」
「自信……持てないわよ、そんなの。みんながみんな、貴方みたいに強いわけじゃないもの」
なんか、その言い方がカチンときた。
「ヒトの事どうこう言う前に、アンタはどんだけやってんスか?」
ただただひたすら前に向かっていく愛しいヒトの顔がちらついた。