第79章 邂逅
1本目は、お互いなんなくシュートを決めた。
2本目も、どちらもミスする事なく2対2の状態を保っていた。
「お……っと」
3本目、チアキサンはシュートを決めて、後攻のオレがミス。
指のかけ方が甘かったせいで、リングに接触した後、その円に沿うようにくるりと回って……外に弾かれてしまった。
「やべ」
みわにも散々言われてたのに、オレは慣れてきた頃のシュート率が一番低いって。
……ん、なんかどっかで聞いたようなセリフだな。
さっきの逞しい眉毛のセンパイの言葉を思い出す。
とにもかくにも、これで2対3のビハインド。
残り2本を全て彼女が決めたら、オレの負けだ。
「悪いけど、勝たせて貰うわよ」
先攻は常に有利だ。
プレッシャーを与える事が出来る立場。
これで4本目も決めれば、後攻のオレには大きなプレッシャーがかかる。
大きく深呼吸をし、ぐるりと肩を回す。
集中する時のクセだろうか?
しかし、彼女の手を離れたボールは……リングにぶつかり、あさっての方向へと飛んでいった。
さっきまでの正確さはどこに行ってしまったのかというくらいのシュートだ。
「……やっぱりね」
彼女は忌々しげにそう吐き捨てて、ボールを拾いに行く。
何が“やっぱりね”なんだろうか?
まあいいや、それはオレには関係ないし、この勝負にはもっと関係ない。
ここは絶対にミスが許されないシーン。
さっきまでだって決して手を抜いていた訳じゃないけど……
意識をずっと深くまで、沈めた。
「はぁ、流石ね。あんなのはピンチでもなんでもないか」
終わってみれば4対3。
彼女は5本目も外してしまったのだ。
「いや、結構真剣に頑張ったんスよ?」
ゾーンに入ったわけでも、パーフェクトコピーを使ったわけでもないけど、限りなくその状態に近いコンディションだったのは間違いない。
以前試合を観に来てくれたみわからアドバイスを受けトレーニングの積み重ねた結果、精神状態のコントロールがずっと上手くなった。