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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


「うん……あたしも今色々考えてさ。多分そういうことになるよね」

「その方がいいとは思うんだけど……でも、あきがいきなり行方をくらませて、彼が逆上するのが一番怖いかなって思うんだ」

脅かすつもりはない。
でも、彼がどのくらいあきに執着しているのかが分からない以上、用心しすぎという事はない気がする。
拗らせたくない。
あきが危険な目に遭うような事態だけは、絶対に避けたい。

「だよねー……引っ越しは最終的に、だけど……それまでどっか泊まり込むかなぁ」

「どこかって?」

「んー……さすがに人んちに長々居座るわけにはいかないから、ネカフェとか?」

「そ、そんなの危ないよ!」

漫画喫茶やインターネットカフェ。
薄暗い個室で、ニュースになるような事が沢山起きている。
涼太から、耳にタコが出来るくらい注意されているから、よく知っている。

「ホテルに連泊するような余裕ないもん」

「うう……」

確かに、毎日ホテル泊なんて、いくらお金があっても足りないだろう。
おまけに、いつまでと期間が決まっているわけでもない。
ただただ時間とお金を浪費するだけだ。

「はあ、自分がこんなにウジウジするなんて思ってもなかった。確かに最近、彼と居て笑う事がなかった。いつも彼の機嫌を窺ってた」

今……“確かに”って、言った?
もしかして、マクセさんと……何か話したんだろうか?

「ハッキリ別れを告げなきゃいけないのは、分かってるんだよ。でもさ……想い出とか情が邪魔して、切る決意が出来ないのよ」

切れない、その言葉と対照的に、あきは持っていたナイフでパンケーキを綺麗に切った。

力が加わった部分が少し沈んで、メイプルシロップが断面に流れ込む。

何層にも重なる断面を濡らして皿へ流れ着いたそれが、何故だか血のように見えてしまった。

別れる、決意。

そんなの、どうやったら出来るんだろう?



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