第79章 邂逅
「ごめんね、お待たせあき!」
出発する時には15分しか違わなかった筈なのに、私の乗った列車は途中、強風のため徐行運転をしてしまって。
結局、30分以上もあきを待たせてしまった事になる。
「あー、大丈夫。お茶飲んでたし」
あきから連絡を受けて向かったのは、駅ナカで人気のカフェ。
彼女の前には、半分ほど食べたパンケーキが置いてある。
そして、向かい側には……空になったコーヒーカップ。
もしかして……
「もしかして、マクセさんも待ってて下さったの?」
「あーうん、ついさっきどっかから電話があって、先に帰ってったよ。お茶代貰っちゃった」
「そうだったんだ、マクセさんにも悪い事しちゃった……気まずくなかった? 本当にごめん」
「気にしないでいーよ。結構喋れたし」
「そっか……それなら良かったんだけど」
元々コミュニケーション能力の高いあきだ。
持ち前の明るさと機転で乗り切ってくれたみたい。
「あんたも食べる? パンケーキ」
「ううん、大丈夫。コーヒー1杯だけ飲もうかな」
私が頼んだ冷たいカフェラテを飲んでいる間、あきは俯きながら残りのパンケーキをつついていた。
悩んでいるんだろうな、とまた胸が痛くなる。
「……あたしさあ、少し離れてみようと思うんだ」
だから、顔を上げたあきが、彼女らしい吹っ切れたような強い瞳をしている事にビックリして。
その口から出た言葉は、私が新幹線の中で導き出した答えと一緒だった。
まずは、距離を取る事。
今はとにかく、精神的にも肉体的にも彼と離れる事が必要だって。
今の傷だらけの状態じゃ、正しい判断も出来ない。
最終的に答えを出すのはあきだ。
「そっか、うん。私も賛成だよ。まずは……引っ越し、かなって思ってた」
彼から距離を取る……
ひとりでは無理だ。
周囲の助けがないと。