第79章 邂逅
翌日はまた私は朝から練習、あきは夕方まで観光をした。
昨日よりも少し早く練習が終わったため、梅田で観覧車に乗ったり、空中庭園展望台から綺麗な夜景を一緒に見た。
やっぱりあきは時々考え込むようにしながら、でも笑顔を見せてくれていて。
少しでも気分転換になったかな。
そして夜、いつもよりも少し遅めの新幹線に乗って帰路につくことにした……
のだけれど。
「も、もしもし、あき? ごめんなさい、発車しちゃった!」
『は、はぁー!? 今あんた、一緒にホームにいたじゃん! 何してんのさ!』
「今ね、女の子に手を引かれてね、お母さんがいなくなっちゃったって、それで駅員さんに声かけようと思ったら発車しちゃって」
『……もーあんたはさ……じゃあ次の京都で待ってるから、次の列車の自由席に乗ってよ。今日はそんなに混んでないっしょ』
「あ、でも、もし混んでたら大変だから大丈夫。疲れて寝たりするでしょう? 東京で合流でもいい?」
『もー。ケーキ奢りなさいよねー』
「うん、本当にごめんなさい!」
やってしまった。
発車直前、私のシャツの裾を引っ張ったのは小さな女の子。
鼻の頭を赤くしながら、縋りつくように。
どうやらお母さんと間違えてしまったらしく、ビックリさせて泣かせてしまって。
本当のお母さんはすぐ近くに居て見つかったんだけれど、急いで乗らなきゃと振り返ったら、既に列車のドアと安全柵は閉じてしまっていた。
もう、どこまで抜けてるのー!
どうやら15分もすれば次の列車が来るけれど、マクセさんとあき、気まずくないかなぁ……。
でも、夕方の時間は意外に混む。
2人だと座れなかったら大変だと思って……。
自分の馬鹿さ加減に呆れながら、次に来た列車に乗り込んだ。
案の定、旅行客やサラリーマンで溢れた車内、名古屋までは空席がなくて……いざ空いた席の隣がスーツのサラリーマンだった為、どうしても座ることが出来なくて、結局デッキで過ごした。
本当にどこまでも、私って人間は。