第79章 邂逅
あきは、小さい頭をふらふらと揺らしている。
瞼の動きがゆっくりだ。
「大丈夫? 気分悪くなる前に横になった方がいいかな」
「んー、そうだね、ごめん。……おまけに愚痴って、ごめん」
窓際に置いてあった椅子から立ち上がったあきは、そのままベッドへ倒れ込む。
ぽすん、と揺れていた頭は枕に吸い込まれていった。
「簡単に答えを出せるような事じゃないよ。悩んで当然だと思う。私に何か出来る事があれば力になるから、言って」
「そだね……ありがと。今はさ、こうして聞いてくれるだけでホントにラクになる。ありがとね。また、相談するかも」
「うん……なんでも言って」
こくりと頭が動いて、スンと鼻を鳴らしたあきは、そのまま眠りについてしまった。
少し考えて、お風呂に入ってからDVについて調べる事にした。
ドメスティックバイオレンス……一言にDVと言っても、その種類は多種多様だ。
あきが受けた性的なものから暴力行為、心理的虐待、他にも経済的暴力や社会的隔離など……沢山のものが存在する。
読んでいて、気分が悪くなるようなものばかりだ。
信じがたい記事ばかりだけれど、これはきっと真実。
そして、私の大切な友人が悩まされている問題だ。
どうしたら、いいんだろう。
彼から離れるというのが、いかに難しいかというのを思い知る。
あきの実家だって大学だって知られているし、私たちの家だって。
そして、きっとある程度の交友関係も把握しているだろう。
それだけ深い仲だったふたり、すぐに何もなかった事にできるほど、ひとの縁は薄くない。
……元に戻る事は、出来ないのかな。
彼と一緒に過ごすからと嬉しそうに微笑んでいた顔を、すぐに思い出せるのに。
どうしてすれ違ってしまうんだろう。
どちらも、相手の事を想っていた筈なのに。
今、私が出来る事。
思いを巡らせながら、浅い眠りについた。