第78章 邂逅
「最近ちょっと油断してんじゃねえの?」
「へっ?」
目の前でみわが作っておいてくれたメシを頬張る笠松センパイが、突然不思議な事を言い出した。
いつもは小堀センパイも来るけど、今オレの部屋にいるのは笠松センパイひとりだ。
「油断……って、なんスか?」
「神崎との事だよ。オマエさ、神崎が浮気するなんてこれっぽっちも心配してねえだろ」
「してないっスけど……この間だって……」
まさかの車内姫はじめを思い出す。
みわがすげー可愛く誘ってくれて……
「イタッ!」
テーブルの下から蹴りが飛んできた。
いつものパワーがないのはきっと、イスじゃないからだろう。
「な、なんで蹴るんスか!」
「悪い、そのヘラッとした顔に腹立って」
「理不尽っス! り・ふ・じ・ん!」
「いや、マジでよ……油断してんなよ。オマエはさ、ふたりは色んな事乗り越えて、絆も強固なものに……って思ってんのかもしんねーけど、そういう時が一番怖いんだからよ」
センパイは、女性経験がない(はず)のに、こういう時の発言はメチャクチャ説得力がある。
ふざけたり、からかったりしてるワケではなさそうだ。
その強い瞳はバスケの時と変わりない。
「あれっスか……運転も、慣れた時が一番危ないって」
「そうそう、ってオマエ真剣に聞けよ!」
「いや、オレなりに真剣に聞いてるんスけど……」
オレの事をよっく知ってるセンパイがこう言うんだ、どこか緩んでるトコロがあるんだろうか。
うーん……?
「最近会ってんのかよ」
「あ、まさに明日会うっス。なんか話したい事があるって」
「ふーん……」
センパイは、なんか浮かない表情。
なんだかんだ、色々あったオレたちの事を心配してくれている。
「大丈夫っスよ、オレたちの愛は誰にも邪魔できないんで!」
明日、久々に会える。
だいぶ浮かれてるのは自分でもよく分かってる。