第79章 邂逅
「なんか、なんか変だなって思ってたんだよね。今まではそんな事絶対になかった。彼は大人で包容力もある人だったから、まさかそんな高校生みたいな事してくるとは思ってなくてさ」
以前、涼太とデートをしている時に会った彼を思い出す。
本当に、あきの事を大切に想っているという感じの優しい顔、大人の余裕、って感じの印象。
先日会った彼とは、空気がもう違ってた。
「そんである日さ、なかなか返信寄越さないからって電話してきたんだけど、私が友達と食事行ってたから、出なかったんだよね。そしたらさ、駅で待ち伏せされてて」
えっ? と思わず聞き返しそうになる。
待ち伏せ……そう言えば、この間だってそうだった?
マンションの下で待ち構えるようにしていた彼の姿を思い出す。
何が怖いって、"相手への思いやり"が全く見えてこないのが怖いんだ。
「実家じゃ流石にまずいと思ったのかな。そのまま彼の車で彼の家に行くことになってさ。車の中で凄く叱責されたのよ。もうそれこそボロクソに。そんなの初めてでその言い方にカチンときて、またちょっと口論になって」
あきは気が強いタイプだし、自分の意思をきちんと持っているひとだから、きっと理不尽に叱責されて、頭に来たんだろう。
「あたしはあんたのモノじゃない、縛りつけないでって勢いで言っちゃったんだよね……そうしたら彼が見た事ない顔して、顔を殴られた」
「殴られ……」
「殴られたって言っても、平手打ちだったけどね。彼も自分でビックリしてた。無意識に手が出たみたいだった」
平手打ちだったけどって……男のひとの力なら、拳だろうが平手打ちだろうが、関係ない。
涼太が以前、マクセさんを殴った時の事を思い出す。
暴力はだめだ、絶対に。
「あたしもさー、ビックリしたのと痛かったので、なんかパニックになっちゃって。泣きながらもうやだ、別れるって言ったんだよね。そしたらそのまま、縛られてナマでヤられた」