第79章 邂逅
「多分、最初は進路の話をした時だと思う。あたしは別に彼に相談することなく行きたい大学を決めてた。保育士目指してるって言う事は、時々話してたけどさ」
どう反応するのがいいか分からなくて、とりあえず頷いて先を促す事にする。
私の余計な言葉で邪魔をしたくない。
「それで、大学名を言った時に彼が"聞いてない"ってちょっとゴネてさ。いや別に、そこに行くなと言いたかったわけじゃなかったみたいなんだけど、都心から結構離れるし、距離が出来るだから相談して欲しかったって」
……私も、なかなか涼太に報告出来なかった。
それはあきとはちょっと理由が違うかもしれないけれど、でも恋人だからってなんでもかんでも相談出来るかって言ったら、それは違うよね。
大切すぎて、相談出来ないって事も……あると思う。
「そんでさ、なんとなくいつものノリで、これから相談出来ないようなこともいっぱいあるよって言ったのよ。だってそうじゃん、自分で決めなきゃなんない岐路だって山ほど出てくるんだろうし、彼にいちいち相談してらんないよ」
あきは、ちょっと言い方悪かったかもだけどさ、と付け加えて。
「そんで、別にケンカになったとかじゃないんだけど、なんとなく彼が怒ってるような雰囲気になってさ……その日は初めて凄く乱暴に抱かれた」
乱暴に、という表現が気になって。
痛かった? 怖かった?
女性は、男性には力では絶対敵わない。
どんなに親しいひとだって、力でねじ伏せるようにされるのは、恐怖以外のなにものでもない。
……丁寧に、優しく触れてくれる涼太の指を思い出す。
「大丈夫、だったの? 怪我とか……」
「んー、でも乱暴って言っても、いつもより強引かもってくらい。拗ねたんだなって、そんなに気にすることもなかった」
「そっか……」
「それから、明らかにメッセージしてくる回数が増えた。既読がついたらすぐに返信がないと、怒って電話がかかってくるようになった」
緊張して、物凄く喉が渇く。
貰った缶ジュースをぐいと流し込んだ。