第79章 邂逅
閑田選手は、覗き込むようにして私の表情を確認し、呆れたように微笑んだ。
「落ち込み過ぎじゃん? 別にいいじゃん、聞いてやりたいって気持ちだって本心なんだろ」
「そう……なんですけど、それって自分の事しか考えてなかったって事に、気が付いて。ちゃんと、友達のタイミングを待つって言ったのに。私、今自分の事しか考えていませんでした。気付かせて下さって、本当にありがとうございます」
彼に相談して良かった。
言われなければ気が付く事も出来なかった。
なんて狭い世界で生きてるんだろう。
閑田選手は、細めていた目を丸くして、ため息をついてから口を開いた。
「すごいね」
でも、その口から出て来た単語は予想していたものではなくて。
「……すごい? 何がですか?」
「みわはさ、そうやって間違えたって気が付いたらちゃんと道を修正出来るから」
「私……が?」
「自分が間違ってたって認める事って、なかなかできないぜ。これがトシを取れば取る程、意味の無いプライドの塊になって、折角アドバイス貰っても自分が正しいんだ~って頑なになる事しか出来なくてさ。哀れだよ」
意味のない、プライド……。
なんだか、とっても具体的な話だ。
誰かを思い出しながら話しているような……。
「それは……お知り合いにそういう方が?」
「まー、元カノが年上だったからさ。次々新しい才能が出てくるのに耐えられなくて、自分が才脳ないのを認められなくて、だいぶ迷走してたから」
「バスケ選手……だったんですよね。それは、バスケでのお話ですか?」
「んーまあ、そんなトコ。もう最後の方は、"自分はこうだから、自分はこうだから"ってそればっかりになっちゃってさ。裸の王様状態。そんなに必死で自己暗示したって、評価するのは周りだ。自己評価ばっかり高くても意味ないんだよ。ひとりで生きてるならまだしも、外に向かって行きたいならさ。それも分かんなくなっちゃったんじゃ、先は見えてるよな」
すごく重みのある言葉。
そして、彼は紛れもなく"才能がある"立場の人間で。
ふたりの間に、どんな事が起きたんだろう……。
「そうだったんですか……」