第79章 邂逅
次の週の週末、いつも通りマクセさんと東京駅で待ち合わせをして、大阪行きの新幹線に乗り込んだ。
今日は、いつもと違って3人席だ。
「今日はいいよ。俺はいないものと思ってくれ。打ち合わせは明日に回そう」
とマクセさんが言って下さったのだけれど、そんなお気遣い頂いてしまっていいのかな……。
いつもは、2人席の通路側に座らせて貰っている。
どうにも、窓際というのは逃げ道がないというか、圧迫感を感じてしまって……。
打ち合わせしながらだとあっという間に時間が経つのに、打ち合わせがない時はやはり少し息苦しくて、席を立つ事も多くなってしまうから。
いつまでも男性が苦手とか言っていてはいけないと思いつつも、どうしても嫌な記憶がチラついて。
怖い夢を見たくなくて、自宅以外では絶対に眠れないし、新幹線での移動は結構神経を使う。
このメンバーなら、私が3人席の真ん中になるのは仕方ない事で。
ドキドキと騒ぐ心臓を説得しながら、席に着いた。
発車メロディーが鳴り終わると間もなく列車が動き出し、背もたれにグッと背中を持っていかれる。
この重力がかかる感じ、車に乗っている時も感じるけれど、嫌いじゃない。
なんか、自分がここにいるって感じるっていうか……こんなの、変かな……?
「あき、今日はどうするの?」
「んー、大阪城行ったり通天閣行ったり、心斎橋をうろつく予定。なんか美味しいモノ食べて気が変わったらフラッとどっか行くかも」
「そっか、細かくは決めてないんだね」
「うん。気分転換が目的だしね。みわ、練習終わって都合つくなら合流しない?」
「嬉しい! する! 美味しいお店、聞いておくね」
「頼んだー」
良かった、あきの表情は柔らかい。
最近の、張り詰めているような顔とは全くの別人みたいだ。
彼から暴力を受けていたなんて、想像すらしていなかった。
もしかしたら、SOSを出していたのかもしれない。
私、ずっとそばにいたのに、全然気付いてあげられなかった。