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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


静まり返る室内。
こんな時間に……誰、だろう。

聞き間違いじゃない、よね。
皆、ドアの外を気にしているから。

「だ、誰……かな」

「さあ……あんた、誰か約束してないの」

私とあきが話しだしたのを彼が見て……一瞬の隙が出来た。
今しかない。

「あき、見に行こう!」

緩んだ彼の腕の中からすかさずあきを引っ張り出し、走った。

「あき」

冷ややかにあきを呼ぶ声が、背中に届いた。







「あき、大丈夫!? 彼の」
「ちょっととりあえず誰が来たのか見ようよ」

「あ……うん、そうだよね」

衣服を直しているあきはあくまで冷静だ。
アワアワしているのは私だけ……それだけ、彼女は今の状況に慣れてしまっているという事。
一体、どれだけの期間……。

とにかく今は、来訪者の正体をハッキリさせなきゃ。

こんな時間に宅配便が来るわけない。
誰かと会う約束もしていない。
もしかして、不審者……?

自然と身を寄せ合って、モニターを覗き込む。

映っているのは……男性だ。
格好はカジュアルなジャケットで、手には大きな封筒。
俯いていて顔が見えなかったけれど、カメラを窺うようにして顔を上げた……あ、このひとは。

「……マクセさん」

「は? 誰?」

あきが連れ戻されないよう、手を引いたまま玄関に向かった。



「遅くに悪いな。これ、頼まれてた書類だ」

「あ……」

マクセさんが手に持っているのは、私が頼んでいた書類。
K大のチームメンバーの、ここ数年間の成績などがまとめられたもの。

そうだった、私が出来るだけ早く欲しいと言って、マクセさんは夜遅くになるかもしれないけれど、いいかと言って下さったんだ。

「携帯に連絡したんだが」

「す、すみません、今丁度見てなくて」

「友達と一緒だったのか。お邪魔した。それじゃあまた」

「待って下さい、折角なのでお茶、飲んで行って下さい!」

縋るような気持ちで、引き留めた。
勝手だけれど、物凄く勝手だけれど、これも何かの縁……かもしれない。

とにかく現状打破する方法を模索しなければ。

「……じゃあ、少しだけお邪魔するよ」

断られるかと思ったけれど、マクセさんは、あきにチラリと視線を移すと、そう言ってくれた。



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