第79章 邂逅
女の子らしく、コスメとか雑貨とか……沢山の物が置かれているあきの部屋。
サバサバしている性格に似合わず、とあきは言っていたけど、そんな事ないと思う。
あきはとっても繊細で、優しいひとだから。
ドアの向こう側……ベッドの上には、上着を脱いでワイシャツ姿になった彼と、ベッドの下には……上半身裸のあき。
「……!」
あきが驚きの表情を浮かべた事で、彼は私が来た事に気が付いたらしく、振り返りもせずにあきに手を伸ばした。
「あきはおっちょこちょいだね。ほら、おいで」
……何かの拍子に、誤って落ちた様子を装っている……ようにしか見えない。
あきは、ちらりとこちらを窺うと彼の手を取った。
そのまま、彼の胸の中に閉じ込められてしまう。
こちらからは、彼の背中しか見えない。
でも、見間違いじゃない筈。
今、あきの身体中にあった、無数の痣。
「あ、あの」
「すみませんみわさん、今いいところなので……分かりますよね?」
柔らかい声色。
それなのに感じる威圧感。
「みわさんのレポートに影響がないよう、すぐに済ませますから……ね?」
……分かった。
あきの今までの態度。
相談しようとしてくれて、でもやっぱりまだ言えない、と言っていたあの時の表情。
無意識に、身体を守るような仕草。
彼に、暴力を振るわれてたんだ。
カッと頭が熱くなる。
目の前が赤く染まっていくような感覚。
……でも、感情で動いちゃダメだ。
彼の方がきっと何枚も上手の筈。
どうしたらいい? どうしたらいい?
だめ。
パッと対策が浮かばない。
とにかく今は、このままふたりきりにしちゃダメ、それだけはハッキリしている。
でも、どうしたら。
八方塞がりになっている私の耳に、インターフォンの軽快な電子音が届いた。