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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


「あ……」

度重なる着信を思い出す。
もしかして、会いに来てるから連絡をくれてたの?
それなら頷ける。どこにいんのー、いつ帰ってくんのーって。

でも……

なんか、違う。
この感覚、説明しろと言われても説明出来ない。

でも、とにかくなんか、違う感じがする。
凄く……嫌な感じだ。

「みわさん、ご無沙汰してます。あきがいつもお世話になって」

出来る大人という感じの彼は、にっこり笑ってゆっくりとそう言った。
ぞわ、と背筋が総毛立つ感覚。何、どうして。

「いえ、こちらこそ……あきには迷惑かけてばかりで」

ちらりとあきの方を見ると、彼女は驚いた様子も無く……無表情だった。

彼は、微笑みを崩さぬままこちらにスッと手を伸ばした。
シワひとつない、上質なスーツ。
確か大手企業にお勤めだって言ってた。

「じゃあ行こうか、あき」

え?
どこに?

「え、っと……もうこんな時間なんですが、どちらに?」

ふたりの事だ、私が口出す問題じゃないって分かっているんだけど……。

「ああ、私の家ですよ。車で来ているので電車も心配ないですし」

怖い。
揺らがないこの態度が、物凄く怖い。

「いいね、あき?」

あきは、言葉を発さぬままこくんと頷くと、彼の手を取ろうと……

「ま、待って下さい!」

したのをどうしても見過ごせなくて、間に入ってしまった。
完全に、勢いでの行動。

「どうしました、みわさん?」

「あ、あの、今晩はあきに、レポートを手伝って貰う約束をしていて」

「……」

「もう、提出が迫っているので、あの、今日は、困ります」

段々何を言っているのか分からなくなってきた。
でも、なんか今日は、このまま行かせちゃだめ。
そんな気がしてならないの。

「……じゃあ、少しだけお茶でも飲んで行こうかな。な、あき」

「……うん」

彼はゆっくりとあきの肩を抱いて、歩き出した。
恋人同士の甘い行為の筈のそれが、全くそうは見えなくて。

死刑台に向かう死刑囚……そんな表現が似合ってしまう雰囲気だった。




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