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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


「あき、ごめんね。あまりに何回も着信があるものだから、急ぎかと思って……彼氏さんからの電話、出ちゃったの」

それなのに、結局お話は出来てないとか、どれだけ役立たずなんだ、私。

「でもね、応答押したんだけどうっかりソファに落としちゃって……その間に切れちゃってたの」

「あ、そーなん? ありがとね」

あきは軽くそう言うと、スマートフォンの画面に触れた。
そして、一瞬……ほんの一瞬、固まったように止まった。

「あの、急ぎだったみたいだし、掛け直していいよ、私先に出とくから」

「んーん、いいよ。後で掛け直す」

そう言うと、スマートフォンを鞄にしまってしまう。
……あきがそう言うなら、いいんだけど……。

あきの希望で、最寄駅前のカフェでコーヒーを1杯飲んでから家路についた。

まだ5月なのに、日によっては夏のような日差しが降り注ぐ事も増えて来て。
ああ、また季節が変わるんだなぁなんて思っていたけれど、朝晩はやっぱりまだ少し冷える。

薄手のカーティガンを羽織って、時計を確認。
あと1時間もしないうちに、日が変わっちゃう。

今日は久しぶりに、遅くまで遊んじゃったな。
あき、少しでも気分転換になったかな。

もうマンションは前方に見えてきている。
なんとなく、家が見えるとホッとする。

でも、気になるのは……

「あき、彼氏さん……大丈夫かな、急いでないのかな」

あきは結局、カフェにいる間も一度もスマートフォンには触れなかった。

「ん、大丈夫大丈夫。いつものことだから」

いつものことって、あの電話の嵐が?
やっぱりちょっと、普通じゃない気がする。

「あの、あき、」

思い切って聞いてみようと口を開いたけれど、マンションのエントランスが目に入って、思わず歩みを止めた。

「おかえり、あき」

スーツ姿のあきの彼氏さんが、立っていたから。

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