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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第2章 痴漢


男性が、怖い。

日頃から男性との接触は極力避けているけれど、
朝の電車だけは、どうしようもなくて……。

登校するために乗らなければならない電車は、通勤の主要路線だからか、朝早くから夜遅くまで、絶えず混んでいる。

入学前にきちんとチェックしておかなかったのは失敗だった。
家の最寄り駅から学校最寄り駅までは40分。

緊張しながら、毎日乗るのにも疲れてきてしまって……。
どうせ今も1人暮らしだし、学校の近所で安い部屋を探そうか。
でも、引っ越すとなればお金がかかる。
どうしたらいいかな……そんな事を考えていたら……
お尻に違和感を感じた。

これは……手?
生温かい感触。

混んでいるから仕方なく当たってしまう、という感じではない。
人から死角になる方向から、ぴったりと密着するそれは、
ゆっくりと……まさぐり始めた。

背筋が凍る。

ち、痴漢だ。
どうしよう……!

手が震える。
声が出ない。

隣に立っているサラリーマンは、イヤホンをしているし、手元のスマートフォンに夢中だ。

どうしよう……どうしよう……
誰か……

願いは虚しく、抵抗されないと安心したのか、手はどんどん大胆に動き始める。

もうすぐ次の駅。
駅に着いたら、他の車両に逃げよう。
でも、ドアが開くのは反対側。
うまく、逃げられるだろうか。

逃げようと構えていたのに、停車の際の揺れでバランスが崩れた。
下車する人の流れに押されて、このまま車外へ出れると思ったのに……ガシリと腰を掴まれた。

動けない。
突然の出来事に言葉を失う。
そうこうしているうちに周りのひとはどんどんと下車していき、私はそのまま反対側のドア前の角に追い詰められてしまった。

迂闊……私のバカ!
どうしよう。

……勇気を出して、声を出すんだ!
やめてください、って!



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