第79章 邂逅
閑田選手の事とか、タケさんの事とか、なんか色々気になる事はあるんだけど、それよりも何よりも今気になるのは、あきだ。
以前、少し待って欲しいと言われてから彼女の様子を伺っているけれど……なんだかやっぱり、変で……。
ちょっと、気分転換をした方がいいんじゃないかな。
何か、悩んでいるのは確実なんだし。
時折目線を下げて考え込む姿……大切な友達が辛そうにしているのを見ているのは辛い。
「あき、土曜日出掛けない?」
大阪に行ったりバイトをしたりでなかなかふたりで出掛ける機会がなかった。
いつも私の相談に乗ってくれてるのに、私は何にもしてあげられなくて。
「あー、土曜は昼間バイト入っちゃってるんだわ。夜、外で食べる?」
「うん、それでも!」
少しでもストレスの元になっているものを緩めてあげたい。
あきが好きなお店、予約取っておこう。
週末は、あきのお気に入りのエスニックのお店にやってきた。
品が良くて温かい雰囲気の内装のこのお店は、座席がソファになっていて、肩肘張らずにゆっくりお喋りするには最適だ。
ソファカバーの華やかな刺繍が、元気をくれるような気がする。
あきオススメのガパオプレートを前に、他愛もない話で盛り上がった。
久しぶりにお喋りして、笑って。
こんなに明るい顔のあきを見れたのは久しぶりな気がする。
誘って、良かった……。
食事を終え、席を立とうとしたタイミングで、テーブルの上に置いていたあきのスマートフォンが振動した。
長いこと震えているのを見ると、メッセージの類ではなく、着信のようだ。
「あき、出ていいよ? 私ちょっと、お手洗い行って来るから」
「あー、うん」
気を遣わせてはいけないと席を立ったんだけれど、振り返って見たあきが、スマートフォンを耳に当てている様子はなかった。