第79章 邂逅
姉ちゃん?
ウチでワイワイうるさいふたりの顔が思い浮かぶ。
いつだったか、みわに聞いた時は1人っ子、って言ってたよな?
「そのひとがね、知ってたの。でも……全然、ピンとこなくて」
そりゃそうだ。
なんで、忘れてしまってたんだろう?
嘘をつくような事とも、思えない。
みわの記憶は、ショッキングな出来事がきっかけだったりで失われて来た筈だ。
と言う事は、姉とも何かあったんだろうか。
ゾワッと、言いようのない感覚が背筋を走った。
なんだろう、この嫌な予感。
良くない、気がする。
分かんない。理由は全然分かんないけど、そんな気がする。
「みわさ……気になるのは分かるんスけど、ちょっと今は考える事から離れた方がいいんじゃないスか? バスケも学校も忙しいんだしさ」
みわは、少し驚いたような顔をして……申し訳なさそうに眉を下げた。
「うん……そうだよね。うん、分かってはいるつもりだったんだけど……つい、考えちゃって。折角一緒にいるのに、ごめんね」
「いや、気になるのはトーゼンっスよ。また落ち着いたらさ、ゆっくり考えたらいいんじゃないスか。今年からゼミも始まったんスよね?」
わざとらしい話題転換、申し訳ない。
でもなんだか、嫌な感じなんスわ。
「うん、そうなんだ。明日、懇親会があるみたいで……」
「ゼミのメンバーで? 仲いいんスね」
「そういうの苦手だし、男のひとも多いからお断りしようと思ってたんだけど……教授がいらっしゃるって、行かないと失礼って聞いたから、参加する事にしたんだ」
「ふーん、そうなんスか」
ゼミのメンバー、ねえ。
進級して、環境も新しくなれば新しい出会いがあるのは当然で。
それは仕方がない事だと、ふたりともそれは同じなんだと分かってはいるけれど。
「酒飲まされたりしないでよ、みわ」
「うん、再来月までは未成年だもん。きっと殆どのひとが未成年だから、それは心配ないと思うよ!」
いつも純粋なみわが、心配なわけで。