第25章 勉強だったり合宿だったり新学期だったり
しかし、悶々とするオレの気持ちとは裏腹に、残りの夏休みは驚くほど甘いムードになる機会がなかった。
いや、元はと言えばオレのせいなんスけどね。
センパイ達が遊びに来てくれた翌日から練習後の時間を使って、夏休みの課題と休み明けのテストに向けての勉強会が始まった。
……のだけれども。
「みわっち、これ分かんないっス」
オレは、数学の課題テキストの1問目で、早速みわっちを捕まえた。
「うん。どこで引っかかっちゃうのかな?」
みわっちは凄く優しい。
どこまで分かってるのか、どこが苦手なのかなどをちゃんと把握した上で教えてくれる。
だがしかしオレは。
「……問題の意味がもう分かんないっス」
これには、流石のみわっちも持っていたペンを落とさざるを得なかったようだ。
「え」
この1問目、いかにも練習問題風な雰囲気を出してるから、これが全くわからないって結構マズイんじゃないかという自覚はある。
微笑みながら、言葉は優しいけれど有無を言わさぬ圧力で、ふたりきりの時の禁欲を言い渡されたわけだった。
「ゔぁーー! 限界っスーー! みわっち! 休憩! 休憩!」
「うん、じゃこのページ終わったら休憩しようか!」
……"このページ"が永遠のように長いんスよ〜……。
でも、流石みわっちは教えるのが上手い。
「私も人に教えると勉強になるよ。中途半端な理解だと、人に教えられないし」
と言っていたが、ハッキリ言って先生の話よりすんなり入ってくる。
(授業寝てるからだろっていうツッコミは控えて欲しい)
しかし、全く甘えさせてくれない。
鬼教官みわっちである。
いつもならオレに甘くて、なあなあになってしまうところも……それはもうキッパリ。
勉強会が始まってから、キス1回すらしてないんスよ!?
こうと決めたら強いところも好きっスけど……
モチベーションが……。
「みわっちセンセー、モチベーションの維持が困難っス」
「……うーん? 何がご褒美になるのかな……ここまでできたらアイスご馳走するとか!」
「みわっち、キスしたいっス!」
「それはダメ!」
「えー! 鬼ー! なんでっスかー!」
出来の悪い生徒でも、譲れないトコはあるんスけど!!