第79章 邂逅
桜の時期って、ホントーにあっという間で。
今年の花見は、バスケ部メンバーで2回のみ、みわとは行く機会がなくて……気が付けば、もう葉っぱだらけに変身してた。
「みわ」
目の前でお茶を飲むみわは、窓の外に視線を落としたまま、心ここにあらず、といった感じ。
珍しい。
そして、呼んでも気が付かない。
「みわ」
「あっ、うん?」
慌てて返事をした彼女は、多分オレが呼んだのが2回目とは気付いてないだろう。
「疲れてる?」
もう初夏と言っても差し支えのない気温。
テーブルの下に落ちた影は、冬のものよりもずっと濃さを増している。
みわの服装も、最後に会った時よりもずっと素材が薄い物になっていて。
頬のラインが少しスッキリしてる気がする。
肩は相変わらず厚みがない。
また、痩せた?
「ううん、疲れてないよ。涼太こそ、折角のオフだったのに、良かったの?」
「いやいや、折角のオフだからこうしてみわに会いに来てるんだって」
みわは、ポンと頬を染めた。
イマイチ、オレの中のみわの存在の大きさというものが伝わらないようだ。
ここは都内……とはいえ、人ごみの中デートをするわけにはなかなかいかなくて。
都心からは少し外れたトコにある、隠れ家カフェ。
モデル仲間から教えて貰った、個室でプライバシーが確保される穴場だ。
窓からは手入れされた庭を眺める事が出来る。
都会にありながら、どことなく非日常感のあるお気に入りの場所。
「もう来週には6月っスねえ。どう? 大阪は」
みわは、2週間に1度大阪に出向いているらしい。
流石に敵校のスパイをするわけにはいかないから、そんなに具体的には聞かないけど。
「うん、少し慣れてきたかも」
「ふーん……?」
その割には浮かない顔っつーか……時々会うマクセサンからは、みわの働きぶりをよく聞いている。
チームメイトからは早くも信頼され、戦力として十二分に活躍しているんだとか。
肝心のみわは、元気がない。