第79章 邂逅
「ま、今どうこう言ったって仕方ないよな。みわの姉ちゃん、ガキの俺から見てもカンペキでカッコいい人だったよなー」
「そう、だったんだ?」
「そうそう、なんでも出来たってカンジ。絵を描きゃなんか賞状貰ってくるし、テストはいつも花マル満点だし、リレーの選手もしてたし。おばさん達も自慢の娘って感じだったよ」
私の家族の事を言われているのに、どこか、他の家庭の事を言われているみたいだ。
「対してみわはドジっ子でさー、池がありゃ落ちるし、木がありゃ登って落ちるし、男みたいだったよな」
「……」
小学校……彼の話からして低学年の自分、本当に何やっていたんだろう……。
「ま、でも人間さ、完璧じゃないものに惹かれるんだと思うよ」
完璧じゃないものに、惹かれる。
なんかとてもシンプルな言葉なのに、物凄い説得力がある。
「スペインのあの有名な建築だってさ、未完成だからこそ価値があるって部分もあると思うぜ」
いつだったか、涼太が一緒に行きたいって言ってくれてたな。
未完成の内に一度見に行って、完成したらまた行きたいって。
「だから俺も、姉ちゃんよりみわの事が好きだったのかも。姉ちゃんは憧れたけどな」
「んぐっ」
再び、カフェラテが変な所に入りそうになった。
「みわはさ、海常でどんな事やってたの」
「あ、私はマネージャーとして……」
突然バスケの話題を振られて、頭が切り替わった。
今、自分が打ち込まなくてはならない世界の事を思い出せて、良かった……。
頭の片隅に家族の事は置いておいて、今は自分のやるべき事を。
思い出せない記憶を探るよりも、目の前のひとたちの事を覚える方が先決だ。
まだ、頂いた資料は8割程度しか頭に入っていない。
そう言えば……閑田選手はどうして私が海常バスケ部のマネージャーをやっていた事を知ってるんだろう?
マクセさんに聞いたのかな?