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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


「姉……ちゃん?」

涼太がお姉さんの事を呼ぶ時の呼び方と一緒だ。
そんなどうでもいい事をぼんやりと考えて。

「一緒に住んでるわけじゃないんだろ。近くに住んでんの? 結婚して家出たとか」

分かった。
やっぱり閑田選手は、私を誰かと間違えてるんだ。

「なんで人違いみたいな顔してんの」

「えっ」

「みわは昔から考えてる事が顔に出やすいよな。今もそう、全然変わってない」

普段涼太にも言われる事だ。
結構意識してるのに……。

「あの、人違いじゃないかと思うんです。私に姉はいないですし」

「……は? 記憶障害って、家族構成まで忘れちゃうもんなん?」

驚いた彼は、ズズッと音を立てて残りのコーヒーを飲み込んだ。
私のカフェラテは、まだなみなみと残っている。

そ、そんなの、私が聞きたいよ……。

「……えっと、分からないです。忘れているかどうかも、分からなくて」

「みわさ、1回ちゃんと戸籍調べておいでよ。7月には成人するんだろ。丁度いいじゃん」

「あ……私の誕生日、ご存じだったんですか」

「覚えてるよ。誕生会行ったし。みわが七夕で、姉ちゃんが3月だったろ」

3月。
もしかして、私が勘違いして覚えていたのは……その、姉というひとの誕生日だったのだろうか?

分からないし、これだけ閑田選手から話を聞いても、ピンとも来ない。
おばあちゃんだって、そんな事一度も言ったことないし……。
そもそも、おばあちゃんは私の姉の事は知らなかったんだろうか?

だめ、どれも憶測に過ぎない。
彼の言う通り、一度ちゃんと戸籍謄本を調べた方が良さそう。

……でも、気軽に役所に行って調べられる気がしない。
どんな事実が書かれているのか、ちゃんと自分はそれを受け止められるのか。
どうやって覚悟を決めればいいのかが分からない。

とにかく、忙しいこの毎日の中で今調べる事が得策とはとても思えない。
状況も気持ちも落ち着いてから、ゆっくり調べよう。

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