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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


「うーんと……きっかけは、正直覚えてなくて。新入生の時に、体育館の前を通りかかって……バスケ部の練習を見てなんとなく惹かれて」

……こうして口に出してみると、なんとも情けない理由だろう。
でも、あの時私の目に映ったバスケ部の皆は眩しくて、眩しくて。
手が届かないと分かっていても、つい手を伸ばしたくなってしまう光だった。

今、こうして居る事が嘘みたいだ。
あの時踏み出した一歩が、こんなに大きな一歩に繋がっていたなんて。

このチャンスを、無駄にしたくない。
改めて、そう思った。

「なんか、意外だね。みわの事だから、もっとなんかコレっていうきっかけがあったのかと思ったわ」

「そう、ですか?」

彼の中の私というのは、どういう人間なんだろう。
私の知らない私がそこに居るみたいで、なんだか不安だ。

でも、ちゃんと向き合うって決めたから。
真摯に向き合えば、きっと結果はついてくる。
いちばん信頼しているひとが信頼してくれてるんだ、私は自分の出来る事を頑張らなくちゃ。

「みわは昔っからマジメだったよな。でも皆に好かれてさ。俺も好きだったし」

「す……!?」

突然飛び出した単語に、カフェラテを吹き出しそうになる。
そう言えば、昔の私は彼のお嫁さんになるなんて言ってたとか。

怖い。
子どもって、怖い!

「なんかみわ、めっちゃ大人になったけどさ、やっぱり変わってないとこもあって安心したわ。なんで記憶がなくなっちゃったわけ? 病気とか?」

どきん。
心臓を鷲掴みにされたような衝撃。

簡単に想像してしまう癖をなんとかしなきゃ。
未だ生々しく思い出される、あの時の映像。

「正直、原因は分かっていなくて……原因となった事すら、覚えていないんです。だから閑田選手との事も、全く思い出せなくて……申し訳ないです」

前を向くって、決めたんだから。
脳裏にちらつく絶望の影を振り切りたくて、大きく首を横に振るった。


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