第79章 邂逅
意識して深く呼吸を繰り返し、温かいカフェラテをひとくち飲んだ。
「……閑田選手の事について少しお伺いしてもいいですか?」
「お、何? 俺に興味持ってくれた感じ?」
「はい。まだ、聞いていない事が沢山ありましたので」
「なんでもどーぞ」
「何のきっかけでバスケを始められたんですか?」
苦手意識ばかりが先行して、彼については詳しく知らない事ばかりだ。
他の選手ではそんな事ないのに。
完全に、公私混同していた。
表面だけ見て、分かるわけない。
「あー、俺? 別になんてことないけど。高校3年の時付き合ってた彼女がバスケやっててさ。俺もやってみよっかなって始めただけ」
「……高校のバスケ部でプレーしようとは思わなかったんですか?」
彼のレベルなら、キセキの世代とは言わないまでも、それなりなところまでいけた筈。
それくらい、センスがある選手だ。
「考えなかったな。1年ならまだしも、3年から入部なんて」
「そう……ですよね」
もし、閑田選手がもっと前からバスケを始めていたら、海常と戦う事もあったかもしれない。
そう思うと、本当に出会いって貴重で……思い浮かぶのは、キセキの世代の皆。
一緒にいると口論ばっかりで、一見仲が悪いんじゃないかと思われがちだけど、皆根っこでは繋がっていて。
そして、私が涼太に出会えたのも本当に大きなキセキ。
まだ耳に残る彼の柔らかい声が、少しくすぐったい。
「どうして、大学では競技を始めてみようと、思ったんですか?」
ほんの少し、間があった気がする。
意識していなかったら、気が付かなかったかもしれないほどの、間。
「あー……うん。まあ。色々あってさ」
これ以上は踏み込んでくれるな、そんな雰囲気だ。
いきなり全部聞こうとするのは、きっと無理。
ゆっくり、時間をかけて構築しなきゃ。
人間関係って、そういうものだよね。
「今度はこっちからの質問。みわはなんでバスケに関わってんの?」
心なしか、閑田選手の口調も柔らかい気がする。