• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


「ありがとう……涼太。カッとなって、見失ってたのかも」

私、閑田選手から何も聞こうとしてなかった。
彼から発せられる言葉に反応するばかりで、彼がどうしてそんな事を言うのか、彼はどうしたいのか、ちゃんと聞いてない。

彼の言葉の裏側が読めなくて当然だ。
私は、何も理解しようとしてなかったから。

『みわがカッとなって、って珍しいっスね。なんか変な男にちょっかいかけられてるんじゃないっスよね?』

だから、どうしてこのひとはこんなに鋭いんだろう。
えっと、なんて返せばいいのか……

『もしそんなヤツが居たらオレ大阪飛んでくからすぐ言って。ぶっ飛ばしてやる』

一瞬で声色が変わって、ゾッとする。
いつもの柔らかい声音じゃない。
彼の中にある、冷たい彼。

「ううん、それは大丈夫。そんなんじゃないから大丈夫。私、ちゃんと向き合ってみる。また……相談しちゃうかもしれないけど、いいかな」

『オレはいつでも聞くっスけど、マジでなんかあったらすぐ言うんスよ。迷惑掛けるとか、そーゆーのないからね、マジで』

「うん、ありがとう。いつも本当に……ありがとう」

ありがとう。
どうしてこれ以上の言葉がないんだろう。

いくら言っても、何度言っても足りない。
どれだけ言い続けても、満足出来る気がしない。

きっとこれから先もずっと、この気持ちは変わらない。
少しでも、私にできる事で恩返ししていくしかないんだ。




名残惜しさがありつつも、通話を終えて店内へ戻った。
閑田選手はスマートフォンを見ていたらしい。
画面を触るでもなく、何かを眺めている。

「あ、オカエリー」

「お待たせしました」

「んじゃ行こうか」

「……はい」

私がすんなり承諾したのが意外だったのか、彼は一瞬目を丸くした。

私らしく。


カフェの店内はお客さんでいっぱいだ。
店内奥のテーブル席を確保する事が出来た。
丁度隣はトイレで、観葉植物が席と席の間にあるから、会話もそれほど筒抜けではない。

メニューが沢山すぎて訳が分からず、とりあえずホットのカフェラテを購入して彼と向かい合った。

/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp