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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


『ごめんね、メシ食ってんならまたかけ直すっスわ』

「あ、ま、待って!」

『ん?』

しまった。
つい、咄嗟に止めてしまった。
大丈夫、まだ鼻声にはなってないし、気付かれる要素は皆無。

「あ、ごめんね、なんでもないんだけど……電話、嬉しかった。ありがとう」

『……』

電話の向こうからは何の声もしなくなってしまった。
不自然だったかな? なんか、気を悪くさせるような事を言ってしまっただろうか。

『みわ、なんかあった?』

ギクリ、頬が引き攣る。
涼太が目の前に居たらすぐにバレてしまっただろう。

「ううん、なんにもないよ。どうして?」

『いや、声に元気がないなって』

声……?
全く意識してなかった。
でも、これで意識して元気な声を出したら、かえって怪しい。

「凄いね……涼太は。ちょっと、意思疎通がうまく取れない選手がいてね、悩んでいたとこだったから」

涼太に変な誤解はさせたくなくて、正直に話した。

彼は、なんて言うだろうか?
オレならこうするっスよ、って、対人能力に優れた彼らしいアドバイスをくれるかも。
それを貰って、少しでも改善出来るかな。

でも、スピーカーの向こうから聞こえた言葉は、そんなものではなくて。

『みわは、いつも通りのみわで居ればいいんスよ』

「……え?」

『みわはさ、どんな選手にでもちゃんと話を聞くでしょ? 先入観も偏見もない。ちゃんとひとりひとり向き合って、一緒に先を見てくれる。今はうまくいかないかもしんないけど、みわのやり方は間違ってない。焦んなくて、いいんじゃないスか』

彼が紡ぐ言葉が、あまりにも嬉しいものばかりで……胸が詰まる。
言い表せない感情で、いっぱいになる。

「で、でも……私、感情的になっちゃって……こんなんじゃダメなの、分かってるのに」

そんな風に言って貰える人間じゃないのに。
些細な事にこころを揺らしてる、卑小な人間なのに。

『感情的になるのは、それだけ伝えたい事があるからなんじゃないスか。それなら、伝わるまでみわらしくやればいいんだと思うっスよ』

みわ、らしく。




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