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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


ゆっくりと、車は私のマンションの前に停車した。
もう、お別れの時間だ。

今日は、まさか会えると思っていなかったから……突然の幸せな時間だった。
元々なかった筈の時間なのに、こうして別れると思うとやっぱり名残惜しくて。

一緒に、居たい。
離れたく、ない。

会うたび、別れ際がこんなじゃ、きっと涼太も困る。
ここは、にっこり笑ってまたねって。
言わなきゃ……。

「涼太、会いに来てくれて……送ってくれて、ありがとう。すごく……」

寂しいのは私だけじゃない、筈。
涼太だって、私に会いたくてこうして来てくれたって言ってた。

「……嬉しかった……また、」

あとたったの一音。

あと一音発したら、バイバイだ。

別に、今生の別れじゃない。
毎日のように電話したり、メッセージを交わしたりしてるじゃない。

そうだよ。大人にならなきゃ。
そう納得させようとする自分が大声で叫んでるのに、ぽつりと呟く声がいやに脳内に響く。

でも、会えない って。

困らせたいわけじゃない。
笑って別れたい。

「みわ」

びっくりするほど優しいその声に続いて、シートベルトを外す音……気が付いたら俯いてしまっていた顔を上げると、視界が彼で埋め尽くされていた。

「ごめんね。寂しい思いさせて」

「そ、んなの……」

そんなの、涼太のせいじゃない。
私だって、自分のやりたい事ばかりをやっている毎日だ。
お互い理解し合って、お互いを応援してるから、頑張れてるんだ。

「オレも……頑張るからさ。みわは頑張りすぎだから、あんま頑張らないように。悩み事は、相談して」

「うん……」

その広い背中に、腕を回す。
おっきいおっきい、背中だ。

色んなものを背負っているこの背中を、支えたい。

「離れてても、気持ちは変わんないっスよ」

ごくごく小さな声で、耳元で囁かれた愛の言葉と共に重なる唇。

飽きることなく、ずっと熱を分け合った。

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