第79章 邂逅
「みわ、喉渇いてない?」
「うん、貰ったお茶飲んでるから、大丈夫。涼太も飲む? 開けようか」
「ん、サンキュー」
ドリンクホルダーに立ててあったペットボトルを持ちあげて、フタを開けた。
涼太の好きなミネラルウォーターだ。
丁度信号が赤になったのを見計らって、手渡した。
「ほらね、これと一緒っスよね」
「これと……?」
「みわ、ここ触ったら気持ちイイ? 次はどうしたい? オレに何して欲しい? って、そういうのの繰り返しだと思うんスよ。喉渇いたからペットボトル取ってっていうのと、一緒。セックスだって、コミュニケーションだから」
セックスは、コミュニケーション……。
ずっと、私の中で性行為は恐怖の対象だった。
恐怖の対象で、女性という受け入れる性である以上、我慢して耐え抜く行為。
それだけだった。
「相手の事知りたいからさ、会話するのと一緒だなって……はは、こんなの都合いいコトっスかね?」
「ううん、分かる。分かるよ」
このひとの事、知りたい。
一緒に過ごすごとに、言葉を交わすごとに、身体を重ねるごとに、近くなっていく。
それって、当たり前のようで、実はすごくすごくキセキ的なこと。
このひとと巡り会えた事が、どれだけのキセキなのか……分かっているようで、分かっていないのかもしれない。
友達も、恋人も。
全部、偶然で繋がってるんだ。
今までの人生の中のピースがひとつでも違っていたら、交わっていなかった縁。
「まあ、最中は頭に血が上って……予定外のこともあるかもしんないっスけど」
「う、うん」
うん、説明出来ることばかりじゃない。
感情って、そういうものだ。
全部、涼太に教えて貰った事。
「だからさ、みわもガマンしないで。前に言った事と一緒っスよ、ワガママになって欲しい」
……涼太は私に甘すぎるんだって。
私、我儘ばかりぶつけてるよ。
涼太をこころの拠り所にしてしまっているよ。