第24章 引越し
結局その後は誰の発案だったか、NBAのDVDを観始めてしまった。
チームの皆であれやこれや言いながら観るバスケは、やはり面白い。
「やべえ、もうこんな時間かよ。黄瀬、遅くまで悪かったな。明日遅刻すんなよ!」
「了解っス! また明日!」
皆が帰って、部屋に静寂が訪れた。
人が来てくれるのは楽しいが、帰ってしまった時の反動が好きではない。
別に寂しいわけではないのだけれど。
みわっちはまだ起きて来ないな……。
寝室を覗くと、ベッドの上で変わらず横たわっている彼女が見える。
「……みわっち」
「……黄瀬くん?」
微かに目が開く。しかし、瞼が重そうだ。
うつらうつらしている。
「明日も練習っスよ。……泊まってく?」
「ん〜ん……かえる」
分かっているのかいないのか。
埒があかないので、強引に身体を起こした。
「みわっち、帰るなら起きないと……。
家でやる事あるんスか?」
「……ある……」
「じゃほら、起きて。みわっち」
"黄瀬には甘えて……"
センパイ達の言葉が頭に浮かぶ。
正直に、嬉しい。
オレには甘えてくれてるんスね。
そんなことを考えていると、みわっちが愛しくて愛しくてたまらなくなる。
この気持ちには底がない。
どうしたらいいんだろう。
女の子と付き合うなんてこと、今までだって繰り返しやってたことなのに。
こんな気持ちになるのは初めてで、自分でもどうしたらいいのかが分からない。
みわっちは受け止めてくれるのか。
この重すぎるくらいの想いを。
「……あ……ごめん……私、寝ちゃってた」
行き場のないこの愛しさをぶつけるかのように、みわっちを強く抱き締めた。
「黄瀬くんっ……? くるし……っ」
「あ……ゴメン……」
「もしかして皆もう帰っちゃった? ごめんなさい、寝ちゃって」
「いいんスよ。そんなんでどうこう言うような人たちじゃないから。合宿疲れっスね」
みわっちがそそくさとベッドから離れる。
「……き、黄瀬くん、明日から夜は課題やらなきゃ間に合わないからね!」
みわっち、今更ながら顔赤いっスよ。
さっきのこと、思い出したんスかね。
わざと関係ない話題を持ってくるとこがカワイイ。