第79章 邂逅
慌てて、口を噤んだ。
頭おかしい。何言ってるの、私は。
今、涼太は心配してくれた。
運転も、優しくなった。
当たり前だ。私が酔ったとか言うから。
苦し紛れに、なんて嘘ついたの……最低。
涼太の優しさにつけ込もうとした、絶対にやっちゃいけない行為だ。
「ごめんなさい、酔ったなんて嘘……。あの、もう大丈夫だから」
涼太は、ハンドルの上で腕組みをして、交差した部分に額を当てて……何、考えてるの?
こんな見え見えの嘘、怒ってる?
その体勢のまま顔をこっちに向けて……何故か彼は微笑んだ。
「えーっと……気分は悪くない、ってコトっスね?」
「う、はい……」
涼太はそれを聞いて、大きなため息をつく……と思いきや、肩を震わせて笑い出した。
「ぷっ……はは、よくモデル仲間とか大学のOGのオネーサンからもされたっスわ、"リョータ君、酔っ払っちゃった〜、送って〜"ってヤツ」
顔から火が噴き出すかと思った。
ううん、頭頂部から多分ちょっと噴き出したと思う。
なんて浅はかな事、したんだろう。
涼太が嫌いな、彼を外見でしか見ていないひと達と同じ事、した。
2分前に戻りたい。
全部、なかった事にしたい。
そんな事出来ないから、もっと考えて行動しなきゃいけないの、よく分かっているのに。
「本当に、魔が差して……反省してる、ごめんなさい」
「いやー、好きなコから言われると、こんな破壊力あんだなってビックリしてたトコっスわ」
「……はかい、りょく?」
「行くっスよ」
そう言うなり、車はまた走り出す。
え?
今の、どういう意味?
車は、高速に乗ることなく、車通りの少ない道を走り抜ける。
処理が追い付かなくて、さっきまで見えてた行き先の書かれた青い看板?標識?も、全然頭に入らなくて。
あれよあれよという間に、また車は停車した。
周りは真っ暗。
ここ、どこ?
「誘ったの、みわっスよ」
涼太が覆い被さってきた……と思ったら、シートの背もたれが後ろに下がって、仰向けに寝転がるかたちになった。
何が、起きているのでしょうか?