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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


「あ、待って涼太」

手を引かれ、階段を下り始めてようやく気付いた。

「ん?」

「あの、私手ぶらで。改札のところにカフェがあったから、コーヒー買ってくるよ」

焦って走り抜けてしまったけれど、この時間だ。
きっと涼太も眠気をおして来てくれたんだろう。

コーヒーくらい、用意するべきだった。
なんて気の利かない人間なんだろう。

そう言っても、涼太の足は止まらない。

「あの」

「大丈夫っスよ、行きにコンビニで買ったしさ」

「あっ、そう……なの?」

そっか。
余計なお世話だったかも。

……それにしても、こんな風に変装して出掛けなきゃいけないなんて、大変だな……。

彼はすっかり有名人。
こんな私と一緒に居るところ、誰かに見られないかな。大丈夫かな。

つい、キョロキョロしてしまう。
誰も、いないよね。

地下駐車場は暗くて、なんだか不安を煽られる静けさ。
きっと隣にいるのが涼太じゃなかったら、耐えられなかっただろう。

でも涼太と一緒だからか、この静かさがかえって心地良いのが不思議。
彼との間を隔てる空間が少し狭まっているような錯覚。

さっき、ずっと気持ちが揺らいでいたからかな。

涼太が車の前でキーのボタンを押すと、車の前後のランプの点灯とともに開く鍵。

すっと助手席のドアを開けてくれる様は、スマート以外の表現方法がない。

「どうぞ」

「あ、りがとう」

そんなに長い時間会えてなかったわけじゃないのに、心臓はビックリするくらい騒いでる。

なんだか、隣に乗るのも久しぶり……。
ファスナーを下ろして覗いた首元は、相変わらず男らしいのに色っぽい。

「ごめんね、わざわざ人が多い所まで来て貰って……」

「会いたかったからって、言ったっスよね?」

涼太がエンジンをかけて、始動したカーナビに一瞬目を奪われていると、フッと視界が暗くなった。

え? と思った時には、私の顎は逞しい指に攫われ角度を変えて、薄い割にはとっても柔らかいくちびるが、重なった。






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