第79章 邂逅
「お疲れ様。今日は疲れただろう、ゆっくり休んで。来月以降の日程表はまたメールで」
「はい、よろしくお願いします。お疲れ様でした。ありがとうございました」
いつ来ても人で溢れている東京駅で、マクセさんと別れた。
良かった。
新幹線内でのマクセさんとの打ち合わせ、私情を交えずにちゃんとこなせた。
後はこの2日間の出来事を自分なりにまとめて、次行く時までには出来る事、やりたい事を整理しておかなきゃ……。
やる事、いっぱいだ。
ゆっくり休んでいる余裕なんてない。
気を引き締めるために、深く息をついた。
閑田選手とのことも、ちゃんと考えないと。
彼から私の家族の話を聞く為には、どうしたらいいんだろう。
……お父さん、お母さん。
また、心臓が騒ぎ出した。
自分でも、家族の話に弱いというのは自覚している。
こんな少しの事で、動揺して。
閑田選手にも、謝らなきゃ。
あんな風に取り乱して。
……涼太。
こころが揺れて余裕がなくなると、甘えた気持ちが顔を出す。
会いたい気持ちが、いつもの何倍にも膨れ上がる。
会いたいな。
もう、練習を終えてのんびりしている時間だろう。
ちょっと電話してもいいかな。
帰り着いてからだと、日が変わってしまうかもしれない。
今、電話してもいいかな……。
いやいや、やっぱり迷惑だよね。
やめよう。明日の夜にしよう。
ううん、でも声を聞くだけなら……。
……。
だめだ、どっちにも決断できない。
この優柔不断なのも、直さないと。
何か気分が変わるものがないかと辺りを見渡すと、あきが好きだと言っていたワッフルのお店が目に入る。
そうだ、明日の朝ご飯、買っていこう。
あきが好きな味と、自分は何味にしようかな……と悩んで、何故か涼太が好きなアップルシナモンにしてしまった。
わざわざ彼を思い起こすような事をして、ばか。
やっぱり、電話しよう。
ちょっと声を聞ければ、落ち着くはず。
鞄に入れてたスマートフォンを取り出す。
どうやら、メッセージアプリに受信の気配。
「……え」
画面に表示された文字を見て……駆けだした。