第79章 邂逅
「黄瀬ってさ、カノジョいんの?」
「ん? いるっスよ」
「即答かよ」
「黄瀬にいないわけないだろ」
駅前の牛丼屋。
4人席のテーブルで、バスケ部の同級生3人で集まってメシを食ってる。
意外に皆忙しく、当日声を掛けると大体大半は欠席で、このメンバーが集まる。
彼らはそれぞれポイントガードとセンターで……まだベンチ入りを目指してる状態。
この中で公式戦に出場しているのは、オレだけだ。
でも、来月からオレ達は2年生になって、センパイになって……彼らが中心になる時代がきっと来る。センスもある。努力もしてる。
何より、一緒に居る理由は……気が合う。
付き合いでの食事が多い身としては、気兼ねなく集まれるメンバーが身近にいるというのはいいもので。
「の割に、外出もしてねーしさ。いないのかと思ったわ」
その指摘に、思わず深ーいため息が出る。
「何、うまくいってねーの?」
さっきからズカズカ聞いてくるのはPGの夏目。
まあまあ、となだめるように一歩引いたところで話に参加してるのはCの井沢。
「まあ……19歳のカップルで、こんだけご無沙汰なのもなかなかないと思うっス……」
みわを最後に抱いたの、いつだっけ?
……え、待って。
今年、まだじゃねえスか!!
「何、遠距離恋愛なん?」
「……いや、隣の県なんスけどね、まあお互い忙しいっつーか……それよりも今重大な事に気付いたっスわ……」
そりゃ溜まるハズだ。
キスしかしてねー。
だめだ、考えると欲しくなる。
考えない、考えない。
「お前みたいなイケメンがチャラチャラ遊ばずに一途とか、最強かよ。存在自体が嫌味なヤツだな!」
「あ!」
そう言って夏目は、定食についてた漬物を攫っていった。
貴重な口直し用!!
……みわ、大阪に行ってんだよな。
昨日電話があったけど、やっぱりだいぶ疲れたみたいだった。
4月になったらまたちょくちょく行くみたいだけど……大丈夫っスかね。
腕時計をちらりと眺めてから、残りの牛丼に手を付けた。