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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


「どうした、大丈夫か」

待ち合わせ場所に指定されていた新大阪駅のおにぎり屋さんの前で、マクセさんは私を見るなり眉を顰めた。

「何かあったのか」

とにかく走ったものだから、汗がひどい。
おまけに、この息切れ具合。
誰が見たって、ちょっとした異常事態だろう。

「いえ……すみ、ません、時間に間に合わないかと、思って……走っちゃいました」

「相変わらず嘘が下手だな。顔色が悪いなんてもんじゃないぞ。何かあったかい物でも飲むか」

こんなに運動したのに、顔色が悪い?
確かに、ずっと心臓が騒いでる。
これは、激しい運動をしたからじゃない。

恐怖だ。
見えない恐怖。
説明できない気持ち。
どうしたらいいのか分からなくて、どうなってしまうのかも分からなくて、不安。

突然揺さぶられて、動揺してるんだ。
でも別に、閑田選手が悪いわけじゃない。
危うく、乱れたこころのまま彼を悪者にしてしまうところだった。

彼は、昔の私たちを知っている。
大きなチャンスだ。
今まで、誰からも聞けなかった話を聞けるんだから。

でも……。
ホテルで、ってそういう事だよね。
ホテルに行って、お話だけして帰ってくるなんて、有り得ないよね。

「ほら」

「あっ、おいくらでしょうか」

マクセさんに連れられたカフェで、ぼんやりしたままいつの間にか注文が終わっていた事に気付く。

「いい、そんな顔のまま居られる方が困る」

「……っ、申し訳ありません。ありがとうございます」

そうだ。
新幹線内は、マクセさんと打ち合わせをする大事な場。
切り替えなきゃ。

温かいカフェラテをひとくち飲んで、気持ちを切り替えるように意識を集中させる。

これから、色んな事があるんだ。
いちいちこころを乱していたら務まらない。
自分の感情をコントロールする術を身につけなきゃ。

あんまりお腹は空いてなかったけれど、サンドイッチを購入して改札口に向かった。


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