第79章 邂逅
「すっげーな、みわの彼氏、完璧じゃん。みわって芸能人かなんかと付き合ってんの?」
閑田選手は冗談で気軽に聞いたのかもしれないけれど、図星、だ。
彼はバスケットボール日本代表選手であり、モデル。
はっきり言って、芸能人なんて簡単な言葉では括れない。
……でも、他人に私との関係をホイホイ話すわけにもいかない。
「……詳しくはお答えできませんが」
「あっはっはっは! 相変わらずみわは嘘がつけないなあ! 面白い! 懐かしいな、この感じ」
彼はもはやお腹を抱えて大爆笑。
「それだけバレバレの嘘だといっそ清々しーわ。そんなイヤ? みわ、男に免疫なさそうだもんね」
やっぱり、信じて貰えるわけがなかった。
涼太は絶対そんな事しない。
どんなに突拍子の無い事を言っても、まず最初に私を疑うって事は、しない。
閑田選手とのこの会話、正直物凄く困ってはいるのだけれど……こころの中の涼太の存在の大きさを再確認してる。
会いたい。
会いたい、な。
とにかく今は、この会話を終わらせたい。
新幹線の時間だって迫ってる。
「丁度俺、彼女と別れたばっかなんだ。これって運命だろ。縁は大事にしなきゃって、みわの親父さんも言ってたし」
突然現れたその単語に、時が……止まった。
「お父、さん……?」
「親父さん、元気してる? カッコ良くて、好きだったなーみわの親父さん」
目の前がチカチカする。
このひと、私のお父さんを……
「私のお父さんを、知っているんですか?」
「ん? 何言ってんの、よく家族ぐるみで行ったじゃん、バーベキューとかさ」
バーベキュー、その単語に何故か頭の奥がキリリと痛む。
目の前を飛び交うフラッシュのような明かりが、増えていく。
「私のお父さん、ってどんなひとでしたか?」
「は? みわ、何言って……」
「どんな……どんな家族でしたか?」
「どうしたの、みわ」
「お願いします、なんでもいい、教えてください」
さっきからこころが揺れて揺れて揺れて
あたまが いたい。