• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第79章 邂逅


「みわ、S小でしょ?」

それは、まさに私の小学校。
地名から取ったものだから、あちこちにあるような名前とも思えない。

「えっと、そう、ですけど……」

「俺達さ、小4まで一緒だったじゃん。俺が4年の頃引っ越しちゃったから、それからは手紙しかやり取りしてなかったけど。秀一だってば」

待って。
全く追い付けていない。

これはまず、大前提から話さなきゃだめだ。

「あの、私……ちょっと色々あって、中学以前の記憶が、殆どないんです」

「ハァ?」

お前何言ってんだ、の顔。
そうだよね、いきなりこんな事言われたって困るよね。
でも、本当なの。
覚えてない事を証明って、どうすればいいの?

「みわが2年の時、鬼ごっこで木に登ろうとして足滑らせて落っこちたことは?」

「覚えてません……」

「昼休みに池の周りを走ってて、みわが滑って落ちたことは?」

「お、覚えて、ません……」

「みわが雨の日に廊下を走ってて、滑って転んで頭を打ったことは?」

「お……覚えて……ません……」

「じゃあ」

「すみません! 本当に、覚えていないんです!」

全く覚えていない事がぽんぽんと彼の口から出てきて、もう恥ずかしいやら何やら、どうしたらいいのか訳が分からない。

「だって、変だろ。中学時代とか高校時代、同じ出身校のヤツとかいなかったの?」

「あの、中学も高校も私立に行ったので……」

「……」

「お待たせ致しました」

「あ、ども」

沈黙を打ち破ってくれた店員さんに、感謝しかない。
でも、材料の入ったボウルを置くと、ごゆっくりと言ってすぐに行ってしまった。

どうしたらいいんだろう。
だって、本当に彼のこと、名前すら思い出せないんだ。

「ホントに、何も覚えてないんだ」

「はい……」

「秀ちゃんと結婚するんだ、って言ってたことも?」

「……はい!?」



/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp