第79章 邂逅
「久しぶりだな、お好み焼き」
「そう、なんですか?」
「そりゃ、大阪の人間がいつでも粉もん食ってると思ったら、大間違いだよ」
「……すみません」
関西のひとは頻繁に食べてると思ったけど、違うんだ。
……そう言えば彼は標準語だ。
確か、出身は関東だった筈。
「ねえ、ところで同い年だし、敬語やめない? おまけに俺達の仲じゃん」
「あの、それなんですが」
「ご注文はお決まりですか?」
ああ、狙ったかのように来る店員さん。
イントネーションが標準語とはちょっと違う。
「みわ、俺にお任せでいい?」
「あ、はい」
海常の皆とお好み焼き屋に行った時も、いつもお任せしちゃってた。
閑田選手は、勝手知ったるという感じで、次々と注文していく。
店員さんは手元の電子手帳のようなものを操作し、注文を復唱して去っていった。
「で、何?」
「あ、あのですね。閑田選手の事、覚えていないんです、申し訳ありません」
言えた。
もう何者にも邪魔はさせまいと、一息で言った。
「みわ、俺の事怒ってんの?」
「へ」
まさかの返答。
怒ってる?
「いえ、違うんです、怒ってるとかじゃなくて、あの、記憶にないんです、本当に申し訳ないのですが」
「ごめん、俺中学に上がってから全然連絡取ってなかったもんな。いきなり大阪で再会して気安く話しかけられて、怒るのも無理ないと思うよ」
「いえ、ですから……ちゅう、がく?」
今、彼はなんて言った?
中学に上がってから連絡を取っていなかった?
と、言う事は……
「えっと、私達……同じ小学校だった、という事でしょうか?」
「……みわ、マジで言ってんの?」
流石に私の発言が演技ではないと気付いてくれたのか、閑田選手は信じられないといった風に眉根を寄せた。